午後二時。

 お昼のピークを過ぎて静けさを取り戻した『milky way』に、アルゼフとはまた別の常連組がやってきた。


「こんにちはー」


 元気よく挨拶をしてくれたのはハルキくん。

 その後ろから眠そうにして着いてきたのがヒサギくん。

 二人とも『milky way』の正面にある美容院『Mo-Mo』で働く美容師さん。

 カウンターに着く二人に注文を取るわけでもなく、僕は飲み物を出す。

 ハルキくんにはアイスティー。疲れているヒサギくんには100%グレープフルーツジュース。

 ハルキくんはグラスを手にしながら、空いたもう片方の手で前髪を掻き上げた。


「結構伸びたよね」

「これ、面倒くさくて切ってないんだけど、イイカンジに伸びてきてるんですよ」


 嬉しそうに返すハルキくんは、無造作に伸ばした髪を手櫛で何度か梳いている。


「そんなもん切っちまえ」


 余程眠いのだろう。ヒサギくんはカウンターに突っ伏したままの格好で喋っていた。


「結構この髪型評判良いんだよ?」

「知るかよ。店に帰ったら切ってやる」

「ヒサギちゃんに切られるのだけは嫌」


 二人のやりとりは、時にエスカレートして口喧嘩へと変わっていくことがある。

 大抵はヒサギくんの逆ギレだったり、機嫌が悪かったりとハルキくんがとばっちりを喰らうんだけど。それでも二人の仲は変わらないのだから、揺るがない何かで繋がっているんだろう。二人を見ていると壊れない友情もある、ってことを実感させられる。