かすかに煙草の香りがして。
ああ、また皇ってば吸ってる。
いい加減本数減らしてもらわなきゃ。
でもいつも隣に感じる彼のぬくもりは、今は無くて。
この煙草の香りは私に移った残り香だと気づいたら、無性に寂しくなった。
皇、と呼ぼうとして、目を開けた。
薄暗い部屋。
かろうじてわかるのはデスクと、パソコンと、オーディオ。
私が寝かされているベッド。
見たこともない部屋だった。
「ここ、どこ……」
呟いた瞬間、側頭部に痛みが走る。
そうだ、私、誰かに殴られたんだっけ。
ううん、私だけじゃなくて、要も……!
身を起こそうとして、手首に感じた違和感に目を向け、ぎょっとした。
「何これ」
私の両手首は頭の両脇、それぞれベッドの柵にビニール紐でグルグル縛られていて。
ハッとして視線を下ろせば、両足首も同じように固定されていた。
「……さすがに皇じゃないよね、これは」
その方がどんなにマシだったか。
痛む頭を軽く動かして、思い出そうとする。
殴られる前に見た、あのーー瞳。
あれを私、前にも見た。
ぞくりと肌を震わせて、唇を噛み締める。
「あの人……」
ああ、また皇ってば吸ってる。
いい加減本数減らしてもらわなきゃ。
でもいつも隣に感じる彼のぬくもりは、今は無くて。
この煙草の香りは私に移った残り香だと気づいたら、無性に寂しくなった。
皇、と呼ぼうとして、目を開けた。
薄暗い部屋。
かろうじてわかるのはデスクと、パソコンと、オーディオ。
私が寝かされているベッド。
見たこともない部屋だった。
「ここ、どこ……」
呟いた瞬間、側頭部に痛みが走る。
そうだ、私、誰かに殴られたんだっけ。
ううん、私だけじゃなくて、要も……!
身を起こそうとして、手首に感じた違和感に目を向け、ぎょっとした。
「何これ」
私の両手首は頭の両脇、それぞれベッドの柵にビニール紐でグルグル縛られていて。
ハッとして視線を下ろせば、両足首も同じように固定されていた。
「……さすがに皇じゃないよね、これは」
その方がどんなにマシだったか。
痛む頭を軽く動かして、思い出そうとする。
殴られる前に見た、あのーー瞳。
あれを私、前にも見た。
ぞくりと肌を震わせて、唇を噛み締める。
「あの人……」