「ごめんなさい……!……っ、ごめんなさい!」


私は小さな子供のように、わんわんと泣き出して。
謝りたいのは、城ノ内さんなのか、梶原さんなのか。

馬鹿な事をした。
絶対手に入らないモノを欲しがった。
梶原さんを想う彼の姿を、彼女から奪い取れば同じ様に得られるものだと錯覚した。

梶原さんだから。
彼女だからこそ、向けた愛情。

そんなの、私は知らない。知らなかった。


城ノ内さんは私の手を放して起き上がると、煙草を取り出す。

「説教とか……。絶対雪姫のお人好し病に感染したな」


さっきまでの冷酷な表情は消えて、複雑そうに笑う彼。
煙草に火をつけて、一息吸って、吐き出す。
ゆるりと昇る紫煙を見上げて。


「俺も家族には色々トラウマがあるんだよ。だからお前に同情したし、俺が見つけた才能だ。伸ばしてやりたいと思ってる。
でも俺が愛したいと思うのは、あの鈍感馬鹿オンナだけだ」


その言葉に。
ああ、城ノ内さんは家族に苦しめられる私を見て、自分と重ねたのかな、なんてうっすらと思って。
それに甘え切っていた自分が、心底コドモだったんだと気付く。


彼は、私に視線を落とした。


「今までもこれからも、俺には雪姫しかいないんだ」


お前にもいつか分かる、と。
真剣な瞳で、優しい声で。

それだけ言うと城ノ内さんはただ黙って、朝までそこにいてくれたーー。


***


「羨ましい」


梶原さんが、羨ましい。

私も誰かに必要とされる時が来るのかな。
いつか自分を好きになれる日が来るのかな。


涙が零れ落ちた。