店の裏手の駐車場に車を停めていたらしく、皇は私を連れてそちらへ足早に向かう。
黙ったまま私を車に押し込んだ。
周りを見回してーー自分も運転席に乗り込んで、ドアロックを掛け、やっと口を開く。

「家に居ろと言っただろ」

ヤキモチなんかじゃない。
尋常ではない彼の様子に私は戸惑いを返す。

「皇、どうしたの……?」


皇は苛立たしげに煙草を取り出して、けれど火を点けることなく握り潰した。
乱暴な仕草につい、ビクッとしてしまう。

そんな私を見て、我に返ったように皇が苦々しい顔をした。


「こ……」


呼びかけた言葉は彼の唇に塞がれて。
そのまま深く深くキスを繰り返す。

……やっぱり、おかしいよ。


「皇?話して」

「お前は知らなくていい」

遮られた言葉で拒絶された。

それを悲しく思う前に、彼の瞳があまりにも私をまっすぐ見つめていたから、


……信じよう。
皇が、私にとってマイナスになることをするわけない。

違和感を押し込めて、黙って、彼のキスに応えた。


「……ところで。なんであいつと一緒なんだ。思いっきり抱き締められやがって」


そこか!!
ス、スルーじゃなかったのね!


「いやあの、呼ばれてつい。だけど皇だって共同責任ですよ!」

私の抗議に、彼は事情を正しく理解したようで。
ニヤリと笑って新しい煙草を取り出した。


「ああ、マトモに歩けないんだろ?」

皇の手が私の腿を撫でるのをぺしっと払って。

「この鬼畜!変態!傲慢!」

「そんな真っ赤な顔で言われてもなあ。誘ってるようにしか見えねぇな」

「都合の良い目ですね!俺様属性専用メガネでもかけてるんじゃないですか?」


なんて二人でジャレているうちに、私はこの時の違和感を、忘れてしまったんだーー。


後で、後悔するとも知らずに。