君の名を呼んで 2

side 皇

隣で眠る雪姫を眺めながら、溜息をつく。

「人の気も知らずに、無邪気な顔しやがって」

つい鼻でも摘まんでやろうかと思いかけて。

けれど雪姫があまりに気持ち良さそうにしているからか、その顔を見ながらいつの間にかニヤけている自分に気づく。
……俺も随分丸くなったよな。

マナーモードのままさっきから鳴り続けている携帯を持って、寝室を出た。


「……はい、城ノ内」

ディスプレイを見て、相手が真野だと確認して電話に出る。


『いつまで油売ってるんだ。早く戻ってこい。どうせまた梶原ちゃんにお仕置きとかしてるんだろ』

お見通しか。

「うるせぇよ。すぐ戻る」

確かに山積みの仕事を放って、真野に任せて帰って来てしまったのは事実。
今頃大変なことになってるだろう。

ソファに置きっぱなしの上着を取り上げた。
車の鍵を出して腕時計をはめながら、肩に挟んだ携帯から真野の穏やかな声が聞こえてくる。


『にしても、城ノ内らしくないね。カスミ達を他に任せるなんて』

「あいつらじゃなかったからな」

俺が遮るように言った言葉に、真野は鋭く反応した。


『……どういうことだ』

「あの男、最初から雪姫を見てた。狙いはカスミ達じゃない。……雪姫だ」


近寄って来た時も、警備員に連行されるときまで、見ていたのはーー。


幸いなのか、雪姫は気づかなかったみたいだが。
呆れるくらい、お人好しな鈍感女。

……でも、不用意に怯えさせたくなかった。
だから、気のせいだと誤魔化したけれど。