君の名を呼んで 2

逃げなきゃーー!
けれど、身体が動かない……!


「ーー雪姫!」


皇の声に私はハッとして、身を反らした。
男の手はそれ以上は届かずに、私の顔すれすれを空振る。

ーー次の瞬間、皇が私達の間に割り込んで男の腕をねじりあげた。


「ンの、馬鹿野郎っ……」

そのまま壁に押さえつける。

「警備員!」

彼の鋭い声に、制服姿の警備員が二人走ってくるのを目で確認して、私はその場に座り込んだ。


「か、梶原さん……」

青い顔で私を呼ぶナナミちゃんに振り返る。

「大丈夫?怪我、ない?」

聞きながら彼女の姿を見て、無事を確かめて。


「大丈夫か、雪姫!」

駆け寄って来た要に頷いた。
それでどっと力が抜けて、今更ながらがくがく震え出す脚に立ち上がる事ができなくなって。


「あ、あれ……?」


おかしいな。
雪姫、しっかりしなさいよ。

「やだ、何で……?」

「雪姫」


そんな私に要が手を差し伸べる前にーー皇が私を抱き上げた。


「あ……」

驚いて彼を見るけれど、その腕は強く私を抱き締めていて。

「よくあいつらを守ったな」

「城ノ内副社長……」


ほめてくれた割に、その顔は厳しい。
怒って、る?

不安になった私の前でーー“副社長”の顔が崩れた。

いつものポーカーフェイスじゃない、動揺と、緊迫と、不安に溢れた取り乱した顔をして。
ただ私だけを見ている。

ゆき、と。その唇から私の名前が零れ落ちて。


「無茶するな、馬鹿……」

「皇……」


ギュ、と痛い程力を込められて、彼がものすごく心配してくれたことに涙が滲む。


「ごめんなさい……」


私は要やナナミちゃん達の前だという事も忘れて、その首に腕をまわして抱き締め返していた。