君の名を呼んで 2


「城ノ内さん、ご相談が」

会社に戻った後はいつも通りの業務をこなして。
もう終業間近の時間に、城ノ内副社長に声をかけて来たのはナナミちゃんだった。

城ノ内副社長はチラリと目線を彼女に向けて、彼にしては珍しい台詞を口にする。


「今じゃなきゃ駄目か?」

「……すみません、どうしても」

ナナミちゃんは引き下がらない。

私は彼と今後のスケジュールを話し合っていたところだったんだけど、深刻そうなナナミちゃんの様子に手帳を閉じた。
こっちは緊急性がある訳じゃないしね。
城ノ内副社長の目線に聞いてあげて、と目配せを返して。

「じゃあ、私はこれで」

と、立ち上がろうとしたなら。


「雪姫」


城ノ内副社長が私を呼び止めた。
その目は、なんだか表情の見えない色をしていて。

何を、言うつもりなのーー?

言葉を待つ私に、ニヤリといつもの笑みをーー少なくとも、そう見せかけた笑みを向けた。


「先に帰ってろ。ベッドあっためて、イイコで待ってろよ」

「皇っっ!?」

予想もしてなかった言葉に、びっくりして、思わず名前を呼んでしまった。
普段ならそりゃあこんな台詞、皇が言ってもおかしくない。

けど、今ここには、ナナミちゃんがーー。