「知ってるんですか?」

「お前の出てた番組は観てたって言ったろ。へえ、アイツ俳優になったのか」


どうやら要本人と知り合いではなく、私の共演者として認識していた程度らしい。

「番組に出てた時から気に入らなかったんだよな。やたらお前との企画が多くて」

「仕方ないですよ。あの頃は私、共演者に嫌われてたから要としかまともに話せなくて……」


苦笑いした私の頭を、テーブルの向こうから皇が手を伸ばして撫でた。
たまにやる、彼の慰め方。

……これ、実は結構好きだったりする。


「それ、嫉妬だろ。番組で一番人気があったの、お前だし。番組企画の人気投票で殿堂入りだもんな」


……そんなことまで知ってるの?


「まさか投票したり」

「皇紀と帝にもハガキ書くのを手伝わせたな、そういや」

……したのね。

私は頭から滑り落ちた指先に頬を寄せた。

「まあ、あの頃が無かったら、私はマネージャーになっていなかったかもしれないし……。今となっては遠い思い出ですよ」

「……で、『要』かよ」

油断しきった私の耳に、皇の声。

う。

人がせっかく気持ちよくまったりしてたのにぃ。

「本人に呼べと言われたら断れないもの。彼もただ昔を懐かしんでるだけですよ」


朔や桜里も呼び捨てにしてるのに。
どうやら『初恋の人』って単語に引っかかったらしい。

そこまで考えて、ふとナナミちゃんのことを思い出した。


「あの、皇……」

「はい、取り調べごっこ終わり。後はベッドで続きな」

「え」

「寝室は完全黙秘禁止だから。思う存分、声出して貰おうか」

「変態!どっちかって言うとあなたが犯罪者ですよね!」


ああ、また。

私は彼に問う機会を失って結局そのまま、まあいいか、なんて流してしまったーー。