「雪姫ちゃんが掛け合ってくれて、キスしてるフリだけになったんです。だからあの人とは、してないの」


そう。
ギリギリのギリギリまで、雪姫ちゃんはやっぱりあたしの味方だった。


「それに、前日にあんな熱烈なキスされたら、たとえホントにしてても全然何も感じなかったと思うけど?」

クスリと笑って囁けば。

「……っ」

二ノ宮先輩はあたしを抱き寄せた。
その顔が少しだけ赤いのは、気のせいじゃないよね?


「この、小悪魔。よく言う……」

二ノ宮先輩は呟いて、あたしにキスをする。
けれど二ノ宮先輩が、やられっぱなしのわけが無い。


「なら、プライベートでも、仕事でも、ファーストキスは俺だな」


酷く楽しそうに落とされた爆弾発言に、あたしは目を剥いた。


「はあ!?」

「知らなかった?次のドラマ、俺と共演。恋人役で、もちろんキスシーンあり」


「う、嘘ぉお!?やだ、やだ!恥ずかしい!絶対皆にニヤニヤされる!」

「楽しみだな?」


やだあああ、なんて。
あたしの絶叫なんて聞き届けてもらえるわけもなく。


かくしてあたしは、猫かぶりのイケメン実力派俳優、二ノ宮朔に落とされたのですーー。



fin.