ヒーロー戦隊の放映が終わってしまった後は、ひたすら彼女の出ている番組やドラマをチェックした。
 小学校でも中学校でも、俺のまわりにはウザいくらい女が居たけれど。
 容姿を騒がれるばかりで、ちょっと本音を言えばすぐに「優しくない」だの、「理想と違う」だの。

 お前らは俺の見た目だけが好きなんじゃねぇか。そう反発しつつ。
 画面の向こうの白雪姫に恋をしている自分だって、結局はそいつらと同類だ。

 本当の彼女がどんな子かなんて、俺は知らないのに。

 そう思って何人かと付き合ってみたけれど、やっぱり長続きはしなかった。

 白雪姫だけは、変わらず憧れの存在で。
 彼女はセリフこそそんなに上手くはなかったけれど、表情一つ一つが強く目を惹いて。
 どの作品も、俺を釘付けにした。


 けれど俺が高校生の時。
 ある日突然、白雪姫はメディアから姿を消した。


 その行方はわからずに、俺は完全なる失恋。
 最初はそれを紛らわすために色んな女と付き合って。
 次第に彼女の存在が、記憶に埋れていった。

 ああ、ホントに白雪姫は、お伽話の存在だったのかもなんて思って。
 その存在を、心の奥深くにしまい込んだ。


 はず、だった。


 皇紀を失って。
 モデルからも逃げ出して。
 そんな時、真野に誘われた、芸能プロの立ち上げ話。

「城ノ内、どう?一緒にやってみない?」

 兄の友人である彼が、兄ではなく俺を選んでそう言ってくれたのは嬉しかったが。

「ちょっと、考えさせてくれ」

 正直疲れきっていた俺は、業界からは身を引きたかった。


 けれど、運命なのか。

 その話を聞いた日、深夜、テレビで再放送したドラマで久しぶりに彼女を観た。

「お前、どこにいったんだよ……」

 胸に残る、あの少女。


 今、彼女は何をしてるんだろう。
 いつか、逢える日が来るかもしれない。

 そう思ったら、逃げることができなくなっていた。