バイトが終わり、窓から外を覗くと、奏と瑠璃がお店の前で待ってくれているのが見えた。
 うわ、もう来てくれてるんだ。
 まだ雪が降っているのに、外で……。
 鹿里君は、まだ来ていないみたいだ。
 待ってくれている二人に対して申し訳なく思った私は、急いで帰り支度を済ませると、同僚に「じゃあ、またね」と挨拶をしてからドアへと向かった。

 この時期、従業員はバイトも含めて、全員サンタ服で接客している。
 そして、私はいつもバイト時に、私服も、学校の制服も持ってきていなかった。
 なぜなら、お店には更衣室がなくて、いつも事務室で着替えることになるから。
 なので、ひょっとすると男性が入ってくるかもしれず、着替えにくいからだ。
 そういう訳で、いつも家で着替えて来て、そのまま帰っている。
 だけど……今日はまっすぐ帰らずに、駅前まで行くことになっていることを、すっかり忘れていた。
 さすがに、この格好でうろうろするのは、恥ずかしいんだけど……。
 でも、「いったん帰って、着替えてくる」なんてことを、外で待ってくれている奏と瑠璃に言えるはずがない。
 そういうわけで、やむなく、この格好のまま行くことにした。



「お待たせ。寒い中、ごめんね」
 私が外へ出て、そう言うと、二人とも「気にするな」と言ってくれた。
「おお! 可愛いじゃん! いいなぁ~、私もそういうの着てみたい」
 私のサンタ服を見て、瑠璃が言う。
「ありがとう。でも、この格好でうろうろするのは恥ずかしいんだけど」
 私がそう言うと、瑠璃は「細かいことは気にするな」と言った。

「それじゃ、みんな揃ったし、行くか!」
 元気良く言う瑠璃。
「あれ? 鹿里君は?」
 私が気になったことを聞いてみる。
「なんか、用事なんだってさ」
 奏が、瑠璃に代わって答えてくれた。
「仕方ないよ~。私が今日いきなり持ちかけた急な話だったし。さぁ、気にせず、出発だ!」
 瑠璃はまた明るく言うと、先頭に立って歩き始める。
 奏と私も、後ろをついていった。