土曜日の午後、鹿里君と私は遊園地にいた。
 この「モカショコランド」は、うちの街で唯一の遊園地で、規模もそこそこ大きい。
 夜にパレードを行うくらいだから。
「今日は俺のために時間を割いてくれて、ありがとう」
 殊勝な様子の鹿里君。
「いえいえ、こちらこそ」
「ナイトパレード、大評判すぎて、俺も気になって気になって。今から楽しみだね」
「う、うん」
 やっぱり、できれば奏とも一緒に見たいなぁ。
 あ、今そんなことを考えるのは、一緒にいてくれている鹿里君に失礼だ。
「ところで、さ。麗って呼んでもいい? 俺のことも『鉄平』でいいから」
 ああ、そういえば、こないだから瑠璃も名前で呼ばれていたっけ。
「うん、もちろん」
「よろしくね、麗。それじゃ、まずはあそこのアトラクションから行ってみよう」
 元気よく歩き出して言う鉄平君のあとをついていった。



 そして私たちは、色々なアトラクションを楽しんだ。
 その間、ものすごく優しくしてくれる鉄平君を見て、彼がなぜ人気者なのかを理解できた気がする。
 ただ、それでもやっぱり……「奏と二人で来たい」と思う私の心は変わらなかった。
 7年前に気づいたこの想い。
 実は幼稚園時代から続いていた可能性もある、この想いを、そうそう簡単に断ち切れるわけがない。
「早くも、もう4時か……。それでも、パレードがある7時まではまだ3時間もあるね」
 鉄平君が時計を見ながら言う。
 辺りは、次第に夕暮れ色に染まりつつあった。
「だいぶ夕方って感じになってきたから、このへんで観覧車へ行っとく? 景色、綺麗だと思うよ」
 鉄平君の提案に、二つ返事で賛成する私。
 そして、私たちは観覧車へと向かった。

 観覧車もそこそこ混んでいたので、順番待ちの列に並ぶことに。
 すると―――。