「やっぱりかっこいいね~、鉄平君」
 12月に入って間もないある日の教室で、鹿里鉄平(しかざと てっぺい)君を盗み見たあと、瑠璃が私に同意を求めるかのような様子で言った。
 私の席まで自らの椅子を持ってきて、現在おしゃべり中の渋宮瑠璃(しぶみや るり)は、私の親友だ。
 今年の4月、この高校に入学した際、私に最も早く話しかけてくれたのが瑠璃だった。
 それから今日に至るまで、私と最も仲良くしている子だ。
 ルックスはかなり可愛いほうだけど、おしゃべりすぎるのと、お調子者なのが玉に瑕かな。
「ああ、うん」
 鹿里君はその太くて濃い眉毛はともかく、少なくともイケメンであることは私も同意できるので、そう答えた。
 また、背が高くて肩幅も広く、がっちりした体格で、スポーツ万能だ。
 そういうこともあって、女子からの人気が非常に高い。
「ああ、付き合いたいなぁ」
 そう言うと、私の机に突っ伏す瑠璃。
 本心からの声、といった感じ。

 すると、そこへ奏(そう)が入ってきた。
 槙原奏(まきはら そう)は、私の幼馴染だ。
 彼と私は、幼稚園児だった頃から仲良くしている。
 そして―――。
 私は奏に、密かに片思いをしている。
 自分の気持ちに気づいたのは、小学校3年生のときだけど、今でも気持ちを伝えられていない。

 奏は、贔屓目なしにイケメンだ。
 クラスの女子の間では、鹿里君のほうが人気はあるけど、それは多分、鹿里君のほうが運動能力に優れているからかなと私は勝手に思っている。
 しかし、私が奏を好きになったのは、ルックスからではない。
 もちろん、かっこいいことは認めるんだけど……。