目の前にいる“ホセ”は今にも泣きそうな顔をしていた。
いつもの仏頂面はそのままに、瞳だけが揺れている。
思った通り、細く華奢な体は真っ赤になっていた。
「何やってんの」
「…」
ほっといてくれ、とでも言いたげに俺を見つめ返す。
俺が視線を合わせようとするとふっとそらした。
「ついさっきクルーが来た。紹介してえんだけどな」
「…構わない」
「そ、じゃあいっか」
そういって俺は一度部屋から出た。
そして旅行鞄を持った白衣の男に声をかける。
「悪かったな…わざわざ」
「いや、いい。どうせ近頃あの星は出るつもりだった」
「そっか…あ、そうだ俺のことはゼウスって呼べよ」
「はいはい」
「絶対な!!」
「分かった分かった」
「…」
どうも調子が狂う。
にこにこしながら決して線はずらさない。
柳のような人とはこいつのことを言うんだろう。
「頼むぜキング」
「任せろ。だがさみしいな、俺はせっかく成人したのに」
「…」
「どうした?」
「どうしたんだよ」
「今気が付いたのか」
これはな、とキングは両足をさらけ出す。
「ちょっとしくじっただけ」
「…」
「そんなに疑わしい目つきで俺を見るな」
「…あ、そ」
「棒読み過ぎるだろ」
なおも怪しそうにキングを見ていると、分かった分かったといってけがのわけを教えてくれた。
「…上質だな、その義足」
「腕もな」
「…」
顔をしかめて俺はホセの部屋にキングを連れて行った。
と。
「閉まってねぇか?」
「…あのやろ…」
これ幸いとばかりに完全に閉じこもったタナトスの部屋をいらいらしながら見つめた。
「…次も叩くと思うなよ…」
俺ははきらりと輝くあの長剣で扉を一刀両断。
軽く息をのむ声が聞こえた気がする。
俺は問答無用で立ち尽くすタナトスを座らせた。


