予定より早まった出航。
クルーの誰もが泣いていた。
唇をかみしめ、震えていた。
ゼウスは奥の部屋に閉じこもっていた。
開けろ、開けろと…
「はぁ、はぁ、はぁ…」
固いコンクリートのベッド。
寝つきは最悪。
何度眠っても悪夢を見る。
眠れなくて自分を傷つける。
ああ、俺がもっとちゃんとしていれば。
もっと、もっと、もっと。
俺のせいだ。
俺のせい。
そうだ、俺が、俺が俺が俺が…
“死んでしまえ、お前などいらない。”
“なぜ生まれた。”
“悪魔の子…”
誰が望んで…俺と…俺なんかといるものか。
利用価値こそ、俺の存在価値だったのに。
守れなかった。
アデスを、死なせた。
永遠の悪夢は俺の贖罪。
構わない。
許されるのなら。
許されないから、辛いだけ。
「おい!馬鹿な真似はよせ!俺を入れろ!
お前だけじゃ、お前だけじゃ耐えられるわけないだろ!
ホセ!ホセ!開けろ!開けろよ!
大丈夫だから!大丈夫だもういいから!
ホセ!壊れるな!頼むから、なぁ、なぁホセ!!
お前だけが悪いんじゃねえよ!!」
固い扉は開きそうにない。
それでも、永遠に戸をたたき続ける船長は、確かに必死だった。


