あいにく武器は部屋。
こんなに不用心だった自分に腹がたつ。
何とか生身で戦ってはいるが、魔法が使えない。
それがつらかった。
基本、星には魔力が少ない。
あの生き物…ふわふわと浮き、頼りなげなあの生き物…がいなければ魔法は無理だ。
厳しい。
場所が狭いため“夢術”も使えない。
ああ、早く。
アデスが、限界に近いんだ。
アデス…
「いいな、いざというときは俺を盾にして生き延びろ」
お前は必要なんだ。
驚いた顔で俺を見つめるアデルは少なからず戸惑っていた。
瞳を見開き、傷だらけの頬にかすかに赤みが差した。
認められてうれしいのだろう。
俺は背後の敵を肘鉄で倒しアデスを庇った。
また、俺の体を貫通していく矢をにじむ視界で捉えた。
「…あと…5分…」
倒れるな、倒れるな。
あと少し。
アデスを…
早く来てくれ船長。
アデスが。
あいつらがみんな死ぬ。
アデスが崩れた俺をそっと支えたのが分かった。
そして数秒後、俺は冷たい床に投げ出された。


