「助けて副船長!!」
「もう限界…っ!」
「副船長!!」
クルーたちの悲鳴がこだまする。
数発の銃弾、数本の矢、幾多の切り傷。
ホテル内で繰り広げられる戦闘。
敵陣の真っただ中にいるタナトスは唇をかみしめて痛みと疲労をこらえる。
孤独に戦い抜くそのすがたは、仲間に見放された幼獣のようだった。
ロビーは血に染まり、それでも次へ次へと敵を倒していく。
しかし防ぎきれない刃は容赦なく体力を奪っていく。
そして…
「うぐっ…」
クルーの背後に忍び寄る敵を見たタナトスは必死に走る。
もう声を出すこともできないのか、クルーとその銃を持った敵の間に割り込む。
発砲された鉛玉は、正確に肩を打ち抜き、タナトスはがくりと膝をついた。
クルーの悲鳴が上がる。
多すぎる敵と少なすぎる味方。
強い、強かった。
いや、まともに訓練などしていないこちらが弱いのか。
なんにせよ自分にとっては敵ではないはず。
そしてまたタナトスは立ち上がった。
そして血をはきながら叫んだ。
「耐えろ!あと1時間だ!!」
もうすぐ、船長が来てくれる。
自分がおとりになって、その間に全員を治療することができれば…
数時間前、ゼウスたちは街へ行った。
狙撃部隊を全員葬り、そのせいでパークを追い出されたのだ。
その辺で遊んでくる、といって帰って来るのは7時だと告げられた。
残ったのは森部隊のクルーだけ。
リーダーのアデスはすでに消息不明状態だった。
ただでさえ治療グループを中心に構成された部隊。
あっという間に攻めあげられ、仲間を庇ううちにタナトスも重傷を負った。
でも、悪夢もあと少しで終わり。
あと、一時間。
60分。
3600秒。
あと、少しなんだ。
ここで倒れれば、間違いなく全員死ぬ。
“暴き屋”の手に堕ちてしまう…
戦乱の中、タナトスはアデスを見つけた。
しめた、こいつだけでも守り抜かなければ…


