左から右へ、右から左上へ。
真下に振り下ろし、間髪入れずに突きをかませる。
腕先だけで右手の剣を放り投げ左手でキャッチ。
逆手にもってナイフのように真横に突く。
刃の角度を45度傾け斜め上前に切った。
同時に手を放し右手で受け取る。
アーチ状に右下まで振り下ろし、ゼウスは満足げに笑った。
一方タナトスは確かに戦っていた。
同時に左足を振り上げ顎にクリティカルヒットを食らわせる。
おろすことなくそのまま左側にかかとで頬を蹴り飛ばす。
背中の中心にかかと落としでとどめを刺すと振り返る。
視線の先にはゼウスがいた。
あたりに金色の光を振りまきながら剣をふるうゼウスに一瞬見とれる。
「うっ…」
自分は永久に浮かべることの許されない完璧に無邪気な笑顔。
綺麗だった。
「タナトース!」
「…!」
「どーした?」
「いや、なんでもな…」
「ん?」
どしたのお前、となおも問いかけるゼウス。
不思議そうに見つめるも、赤い瞳の中のすっかり消えた光は動かなかった。
「まだくる」
「そっか…お前大丈夫?」
「何がだ」
「さっき腹やられてたじゃんか」
「…!」
気づかれていた。
その思いでひどく動揺したタナトスにゼウスは笑いかけた。
「大丈夫なのかー?」
「…」
心底辛そうに俯いたタナトスにゼウスは困った顔で微笑んだ。
「休む?」
「いや…悪い」
「どっちだよ」
「平気だ。だが…」
口ごもっているタナトスをせかすことなくゼウスは軽く笑った。
「心配させて…悪かった…」
辛そうにそういうタナトスに、はぁ、とため息を吐いてゼウスは眉をひそめる。
「そんくらいで落ち込むなよ」
ひどい罪悪感に苛まれているタナトスは苦しそうに空を見上げた。
「…ほんと、ごめん」
つぶやかれたにもかかわらず、その声は大きすぎるほどにゼウスに届いた。


