背負った剣をさやから解き放つようにさらけ出すゼウス。
長さは身長くらいあるのだろうか。
若干細身の剣は宝石で飾られたつかを持ち、ゼウスが構えればきらりと危険に輝く。
空中を滑るように落ちていくゼウスは向ってくる凶弾を弾き飛ばしながらにたりと笑んだ。
一方タナトスは今にも降りようとしている。
残りは5m…4m…3m…2m…
タナトスは一気に身をよじり、金属部のエッジを敵の首筋へと這わせた。
驚いた狙撃手。
雪は熱く赤い血潮で溶かされていった。
板の側面のエッジは、吸うこともせずに赤い血を黒く染め上げて行った。
「…」
「イーリスの仇っ!」
「ざくー。」
素早い動きで敵を切るため、まともに音が出ない攻撃を気にしているゼウス。
彼は派手なものが好きなのだ。
そのため、いつもタナトスが擬音語をしゃべる。
ただし感情がないのは仕方がないだろう。
お約束なんだから。
「もうちょっと工夫…」
「じゃきっ。」
「だからさ、。じゃなくて」
「ぐさ、」
「おーい…」
だめだ…といい加減に心が折れたゼウスは戦うのをやめて雪に頭をうずめる。
タナトスにそれを冷たく見下され、ゼウスはさらにへこんだ。
「…しにたいのか」
「お前のせいだよこの絶対氷点下野郎が!!!」
「…ゴメンナサイ」
ぺこん、と謝るとふざけんなとゼウスが跳ね起きる。
元気になってよかったね、などと喜んでいる場合ではない。
こういう茶番をしている間にも敵は攻撃を仕掛けてくるのだ。
「うりゃあ~!」
ゼウスは腰のあたりに剣を構え、振り向きざまに地面と平行にぐるんと振った。
数人の兵士が倒れてにやーとゼウスが嗤う。
「ざまぁwww」
「…性格のねじまがってるのが目に見えるようだ」
「お前はどうなんだよ!」
「俺は性格云々全部お前の理想だからな」
「…」
あきらめてゼウスはまた剣をふるった。


