今にもくずれそうなふわふわの雪を撥ね飛ばしながら滑り落ちていく。
ゾーン的には初級だから初級者コースってことにしておく。
当然俺は慣れてるけど、隣の無愛想イケメンはそうでもない。
前の前には初めてだって言ってたし、実際そうっぽかったし。
「上達したなーお前」
「そりゃどうも」
その日のうちにサイドスリップ(木の葉滑り)Sターン、スイッチCターンをマスター。
次の日にはジャンプ。
そのまた翌日には教えてみたトリックを完璧にものにしてた。
「天才だなーお前」
大きな木を二人で八の字を描いてよける。
一回前の時に板をやったらちょっとハプニングでさらに腕が上がった。
もうじき冬季のスポーツ大会に呼ばれるんじゃないかって俺は思ってる。
ただでさえ船空けることが多いのにもっと多くなったらやだな、なんて。
いてくれって言えばいるけど、あんま困らせるわけにいかないだろ。
「イケメン」
「皮肉か」
「うるせえ」
ほら、無自覚。
いっつもいっつも街を歩けば周りはほとんどこいつを見てる。
全然気が付かねえからたちがわりぃ。
なんかムカつく。
でもいいんだ。
本当のこいつを知ってるのは俺だけだから。
「なあホセ?」
「その名で呼ぶなクラウン」
「おあいこだろ」
「…お前が言うからだろう」
「いなくなったりしねえよな」
「……考えとくよ」
「いなくなったら許さねぇ」
「勝手だなお前」
「別にいい」
だってよ、お前がいなきゃ俺、生きてけねーもん。


