「君だったんだ。昨日の演奏は…。」 扉を開く。グランドピアノの前に座っているのは。 「八瀬…孤乃羽…」 彼女だった。 「ふふっ…聞いていたんだ。恥ずかしいな」 「……。」 「メンデルスゾーン…春の歌。あの曲は、私が小さい頃初めて聞いたクラシックなの」 彼女は語り始めた。 音楽を始めたときのことを。