風が、吹いた



「最初から、ずっと、好きだったんです。」




もっと、早く言えば良かった。



もっと、素直になれば良かった。



あの時間は、当たり前のものではなかったのに。



貴方の隣にもっと居れば良かった。



そしたら、あんなに後悔することはなかったのに。



ずっと、ずっと、想い続けてきた。




もっと。




貴方の名前を、




いっぱい、呼べば良かった。





「孝一…」




握る手にぎゅっと力を籠め直す。





「私、貴方の傍にいたい。」





念じるように目を瞑ると、また一筋、大粒の涙が零れた。












微かに。





停止していた部屋の空気が、揺らいだ気がした。




自分のものではない感触に、思わず目を見開く。




ほんの少し、握り返された、手。