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―ピッピッピッピッ
広い個室に、心電図を測定しているモニターが音を刻んでいる。
年末から目を開けることの無い孫を、老人は初めて見舞いに来ていた。
大きな窓ガラスからは、雪が未だに見えていて、風景を白く変えてしまうものだから。
「そろそろ、飽きたのぅ」
話し掛けるかのように、ひとり、呟いた。
当然、孫の反応はない。
穏やかに目を瞑る青年は、あどけない顔をしていて、冷酷な采配を振るう若手社長には見えない。
白い病院のシーツ、アルコールの香り、点滴がぽたぽたと落ちてはチューブに吸い込まれていく様子は、全てが死を匂わせる気がした。
怪我は大きかったものの、手術は上手くいったのだ。
なのに、どうしてか、彼は目を覚ますことを拒んでいる。
「そんなに、良い夢を見ているのか?」
窓とベッドの間に杖をつき、椅子に腰掛けながら尋ねる。
勿論、答えは返ってこない。


