風が、吹いた




________________________

嫌な予感がする。




沢木は胸騒ぎを覚えていた。




森明日香の失踪から、社長は無期限で休みを取ると言った。




そこまでは、いい。




しかし。。




社長は、これは自分の問題と、ボディガードを付けなかった。




「間違いだった…」




無理矢理にでも、付けておけば良かった。



はぁ、と頭を抱える。




携帯も自宅の電話も繋がらない。




もちろんGPSも役に立たない。




そこへ、沢木の携帯が震える。




急いで通話ボタンを押す。



「…?病院?」




胸騒ぎの予感は、どうやら的中したようだ。




コートをひっつかんで、すぐさま向かおうとすると、今度はデスク上の電話が鳴る。



構っていられない、とそのまま部屋を後にした。



留守メッセージ録音に入る電子音が、がらんとした部屋に、ピーと響く。




《沢木か?居ないのか?》



苛立ちをなんとか抑えようとするような声がスピーカーから漏れる。




《私だ。連絡来たか?孝一のことで、至急連絡が欲しい。マスコミが嗅ぎ付けてる。》




チッという舌打ちが、動揺を物語る。




《どうも、ウチは悪役(ヒール)にでっちあげられてるらしいぞ。会社の周りや身辺、気をつけろ。》




言葉はそこで切れて、単調な機械音が、録音が完了したことを知らせた。