風が、吹いた


「でも、そんなことになったら、あなた達にとっては非常にまずいんでしょうね。志井名さんも黙っていないんじゃないですか?代わりはいくらでもいるでしょうし?その人みたいに。」




再度、女は神林を指差した。




「…それは…脅しか?」




リーダー格の男が呟くと同時に、男達も拳を手の平に打ちつけ、パァンと鳴らす。




「それなら、ここで消えてもらう。」




その言葉を聴いてもなお、女はけらけらと笑った。




「いいんですか?そんなこと言って。私が誰だかご存知ないわけないと思いますけど。」




放つ言葉に、ピタリと全てが動きを止めた。




「……まさか…」




「それに」




リーダー格の男の呟きに重ねて、女は言う。




「こちらにも屈強な男たちが居ます。きっと、いえ、確実にあなた達は勝てないでしょう。まぁ、どうしてもというのであれば力づくでいかせていただきますが。果たしてこのまま引き渡すのと、どちらが懸命な判断でしょうね?」




女は不敵に笑う。




雪だけが、無関心を決め込み、さっきと変わらずに、降っていた。