風が、吹いた


後から来た刑事の乗用車で送ってもらうことになり、後部座席に座るよう促された。



ふらふらとした足取りで、言われた通りにすると、バタン、とドアが閉められる。




「…あの…あの…人、、大丈夫なんでしょうか…」




運転席に座った中年の男性に、ぽつり、訊ねた。




「…うーん。俺は怪我の状況見てないからわかんないけどね…現場に残っていた出血の量だと…。背中から思い切り振り下ろされていたらしいじゃないですか。。正直、なんとも言えませんね。。。いや、申し訳ない。」




エンジンをかけ、ハンドルを回しながら難しい顔で彼が答える。




「…病院、とか…教えてもらえることって…」




「可哀想だが、お偉い人のなんとかで、それができないんです。色々複雑なんでしょうなぁ。忘れた方が良い、としか、言えない。」



上からの命令なのだろうが、本人は不本意なのだろう。



苦渋に満ちた表情をしている。