風が、吹いた




「え、何?あのおじさん、このこと言ったの?」




思わず新聞を手に取って見る。




「森グループ…?」




見出しの記事に、言葉を失った。




「お前、、、本当にここ数日ぼけっとしてたんだな。」




未だ頭をさすりながら、東海林が呆れたように言った。




「癒着とかなんとかは俺らに関係ないだろうが、それに関わってた森は呉間の大株主だ。森自体も恐らく潰れる可能性が高いし、呉間も掠り傷じゃ済まされない。」




その横で、加賀美が腕組みをしながら、何やら物思いに耽っている。





「まさか森が、結構な火の車に乗っていたとはね…。嘉納も災難だよなぁ…っておい、聴いてる?」




記事を見つめながら、呆然とする私に、東海林が手をぶんぶんと振る。




呉間が危ない、ことよりも。




私の胸を騒がせていたのは。




自分の幼馴染みの、




森明日香の婚約がなかったことになったという文章。




なんだろう。





この、





気持ち。





幼馴染みへの心配。




と。




何かが、引っかかっているような、




歯痒いような、




この気持ちは、一体なんなんだろう。