後片付けだけして、加賀美と一緒に実験室を出る。
「久々に、家に帰ろうかなー」
うーんと伸びをしながら一人言(ごち)れば。
「今、午前3時だって、気づいてましたか?」
隣の彼女から冷たい一瞥。
気づいていませんでしたとも。
「…ごめんね。心配掛けたんだね。」
なんて不甲斐ない先輩なんだ、と肩を落としながら加賀美に謝る。
「いえ。実験に対する熱意がないのに、ぼーっと愛しいバクテリア達を弄られるのが我慢ならなかっただけです。」
ずきずきと痛む心を抱え、この子、こんな子だったっけ、と首を傾げた。
休憩スペースに着くと、東海林と常勤の警備員が、向かい合って談笑していた。
「いやー、だからもー、俺、早くこのプロジェクト終えたくて」
「うん、でも…それよりこの会社自体、大丈夫なのかねぇ」
その背後に迫る黒い、影。
気づいた警備員は声を失う。
気づかない東海林はまだしゃべり続けている。


