「つーか、大丈夫なんですか、あれ。癒着問題ってどういうのか実際知りませんけど、普通トップが捕まるもんなんですか?」
落ち着いた口調で彼は尋ねる。
黙り込む俺に、浅尾は、あ、と呟いた。
「大丈夫ですよ、俺。あんたの素性、知ってますから。脅すほど、人間腐ってませんし。」
安心させようと言っているのだろうが、何故だろう。癇に障る。
ふー、と諦めたように溜め息を吐いて、俺は頷く。
「志井名は確かに俺の祖父だが、嘉納や俺に火の粉が飛ぶことはない。」
10年も前からの計画だ。4年前から、俺が指揮を執っていた。ぬかりなくやっていた筈だ。
万が一、嘉納の関与が疑われたとしても、明るみにでる程の材料は何ひとつありはしない。
むしろ、提携したばかりの森に裏切られたという被害者的な立場が取れる。
「祖父は捕まったわけではないしな。ただの事情聴取だ。すぐに帰ってくるだろう」
淡々と答えると、浅尾が眉間に皺を寄せた。
「森は?潰れるんですか?」
その質問に対しては何も言わず、ただ、肩を竦めてみせた。


