風が、吹いた




バタン、という扉が閉まる音がしたかと思うと、




「ふっ。大成功だなぁ。いやぁ、実に気分が良い。あのじじぃのことだろう。罪をかぶる人間なんて用意してあるだろうし、金を幾らでも積んですぐに業務に戻るだろうがこの一瞬が命取りだ。」




晴れ晴れしい笑顔でそれを見ていた父が振り返る。




秘書の沢木は、さすがというべきか、淡々と片づけを行い、業務に戻っている。


俺はと言うと。



相変わらずの表情のまま、座って居た。




「さぁ、つまらん茶番劇をやってしまった。暇つぶしにはなったがね。私は業務に戻る。いずれ祝杯をあげよう。」




沢木の持つコートに袖を通すと、猛は颯爽と歩き、出て行った。