風が、吹いた



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―12月25日。




全ての準備が整った、当日。




朝から世間は騒がしく。




テレビも紙面も、同じスクープで持ちきりだった。




―雪が、降ればいいのに。



なんとなく、そう願って窓の外を眺めていた矢先。




部屋の外から何やら騒々しい音がしたな、と思った瞬間、バァンと扉が開け放たれる。




「孝一ぃ!!!!!貴様ぁ!」




秘書の制止を振り切って、怒声と共に杖を振り回し、デスクに座る俺に掴みかかる、老人。



すぐさまボディーガードが彼を捩じ伏せる。



襟を軽く直し、得意の笑顔を貼り付けて、惚けた。




「そんなに慌てて、どうなさったんですか?志井名会長?」




志井名は取り押さえられたまま、わなわなと怒りで体を震わせ、額には青筋を立てている。




「…惚けるんじゃない!いや、お前じゃない!嘉納猛を呼べ!今すぐに、だ!!!!」




ぜぇはぁ、と息を切らしながら、喚いた。