風が、吹いた


車窓から見える赤いテールランプに、苛々する気持ちが重なる。



時刻を確認するために、腕に目をやった。



あと5日すれば、物事は大きく動くことだろう。



全ては仕組まれたままに動き、計算通りに進んでいっていた。




ただひとつ。




自分の過去を除いては。




千晶を傷つけたのは、また、俺か。




己の非力さと、巡り合わせの悪戯に、頭を抱えた。




どうしても交わることのない人が、



惹かれ合っても反発してしまう存在が、



この世の中には居るんだな。




あぁ。




自分は何のために、あの人を置いてきたんだっけ。




何を守ろうとして、思いを断ち切ったんだっけ。




そして、手元には何が残るんだろうか。