「え…、お父様とも進めていた話よ。私たち、婚約を発表するべき時期だわ。貴方も頷いていてくれたじゃない。」
落ち着こう、としているのか、森明日香は、長い髪を耳に掛ける。
「私が最初から貴方に好意を示しても、全然振り向いてくれないから。。貴方が言う通りにお父様にお願いして提携まで結び付けたし、約束通り色々と上手く行ったわ。もうそろそろ、いいでしょう?」
懇願するような、口ぶりだった。
「何か、勘違いしていないかな」
笑った顔を、彼女に向けたまま、言葉を続ける。
「提携は、君のおかげで上手くいったわけじゃない。なんでも君の言う通りにする程、森氏は馬鹿じゃないよ。俺が君に良い顔をしていたのは、うるさく邪魔されたくなかったからだ。」
森明日香の顔が、かっと赤くなったのが仄かな照明の中でもわかった。
「そんなっ…!もしかして反故にするつもり?!そんなこと、お父様が許さないわ。嘉納財閥との提携なんて取りやめになるわよ!」
この後に及んでも、親の権力を振りかざす目の前の女にうんざりする。
しかし、貼り付けた笑顔は崩さない。
「提携という言葉を使ったのは、森氏に配慮してのこと。表向きはそうなっているが、実際は吸収だということに、君は気づいていないのかな?」
「なっ…」
彼女は言葉を失った。
「君に教えるのはここまでだ。そして会うのも、我が儘に付き合うのも、今日で最後。もう君に用はない。」
よれたワイシャツを直し、ついてしまった香りを払うように軽く叩いてから、部屋を出ようとドアノブに手を掛けた。
落ち着こう、としているのか、森明日香は、長い髪を耳に掛ける。
「私が最初から貴方に好意を示しても、全然振り向いてくれないから。。貴方が言う通りにお父様にお願いして提携まで結び付けたし、約束通り色々と上手く行ったわ。もうそろそろ、いいでしょう?」
懇願するような、口ぶりだった。
「何か、勘違いしていないかな」
笑った顔を、彼女に向けたまま、言葉を続ける。
「提携は、君のおかげで上手くいったわけじゃない。なんでも君の言う通りにする程、森氏は馬鹿じゃないよ。俺が君に良い顔をしていたのは、うるさく邪魔されたくなかったからだ。」
森明日香の顔が、かっと赤くなったのが仄かな照明の中でもわかった。
「そんなっ…!もしかして反故にするつもり?!そんなこと、お父様が許さないわ。嘉納財閥との提携なんて取りやめになるわよ!」
この後に及んでも、親の権力を振りかざす目の前の女にうんざりする。
しかし、貼り付けた笑顔は崩さない。
「提携という言葉を使ったのは、森氏に配慮してのこと。表向きはそうなっているが、実際は吸収だということに、君は気づいていないのかな?」
「なっ…」
彼女は言葉を失った。
「君に教えるのはここまでだ。そして会うのも、我が儘に付き合うのも、今日で最後。もう君に用はない。」
よれたワイシャツを直し、ついてしまった香りを払うように軽く叩いてから、部屋を出ようとドアノブに手を掛けた。


