風が、吹いた




長い月日が経っても、彼女は変わらずに。



むしろ前に別れた時よりも、ずっと美しくなって。




だけど、再会は、笑顔じゃなかった。




呆然とした顔と、そして、痛みに堪えるような顔。




―当然だよな。




彼女にとって、置いてけぼりは、タブーだ。



愛する人に、何度も置いていかれて、それは人を寄せ付けないほどの心の傷となっていたんだから。



更に、傷つけた張本人の俺は、のうのうと生きていて、もうすぐ結婚すると聞く。




「最低な男、だな」




ははは、と笑いたくもないのに、笑いが込み上げる。



大体笑ってどんなことも済ませてきたから、笑い癖がついている。




それも仕方のないことだ。