風が、吹いた




「……?」




唐突に言われたことの、意味が理解できない。




「別れようって言ってるんだよ。もう、放してあげる」




浅尾が苦しげに、微笑んだ。




「…っ、なんで?どうして突然そんなこと言うの?私浅尾のこと好きだよ?こないだの件で怒ってるなら―」




「違うよ。」




やけにはっきりと否定する浅尾に、言葉に詰まった。



「違うんだ」




頭の中はぐしゃぐしゃ。




「わ…たし、別れたく…ない」




やっとのこと、声を絞り出すと、涙で目が滲んで浅尾の顔がぼやける。





「悪いところがあるなら…全部…直すから…だから…」




その言葉を、彼は痛々しい表情で受け止める。




「倉本が、悪いわけじゃないんだよ。忘れろって言っておきながら、それを望んでおきながら…倉本が本当に忘れてしまうまで、気づかなかった俺がいけないんだ」




「何を言ってるのか、わかんない」




顔が歪んでいるのが、自分でわかる。




浅尾はじっと私を見つめた。




「お前が本当に必要なのは、俺じゃない。俺じゃ、駄目なんだ」




目を、逸らすことなく浅尾は続ける。




「倉本には、椎名先輩が必要なんだよ。」