風が、吹いた


「え、今って、浅尾ちょっと何処?!…あ」




数メートル先で、一生懸命携帯に向かって話す彼女にー




「ここだよ」




声を掛けた。




彼女は驚いたように、目を見開く。




暫くぶりに見るその姿が、やけに愛しくて。




自分の決心を、鈍らせようとする。




それを振り払うように、携帯の通話を切った。