浅尾が去った後、残された2人は、目の前にあるカフェオレに口を付けた。
「志井名さんのことを噂で聞いたのは、私が中等部の頃だったので、彼はもう同じ学校には居なかったんですけど。」
ぽつり、加賀美は呟くように話し始める。
「去った後でさえ、絶大な人気がありました。でも、彼は、やっぱり他人に興味を持たなかったそうです。冷たくて、完璧で、常に一番前を歩く人。嘉納でも容赦なく必要のない人材を切っていっている冷徹無慈悲で有名なその人が、誰かを愛することがあるのか、未だに信じられません。」
だけど、と言葉を繋げる。
「倉本さんを好きになる気持ちは、わかる気がします」
その言葉を聞いて、吉井はにっこりと笑った。
「私も、そう思う。」


