「わかりませんが…嘉納に森がつり合わないということは、はっきり言えます。それで、両家の確執を考慮にいれるならば、恐らく、森と繋がることで、志井名に少なからず打撃を与えることができるのでは、と私は考えています。」
加賀美の真剣な声に、ふーん、と浅尾は相槌を打つ。
「そこから、あいつを救うことはできないのかよ」
「…と、いいますと?」
「両家から良い様に使われてるだけじゃねーか。あいつは、家から自由にはなれねーの?」
「先日見かけた彼は、倉本さんのことを覚えているようには見えませんでしたから、案外今の立場を気に入っているのかもしれませんよ。」
バタン
加賀美のその言葉に、浅尾が勢い良く立ち上がった。
「ちょ、浅尾何やってんのよぉ…」
「忘れるわけない。…あいつは、今でも間違いなく、倉本のことが好きだよ」


