暫くしてから、デスクに置かれた電話が鳴った。 「はい。」 《嘉納会長からお電話が入っております》 「繋いでくれ」 電子音が入り、すぐに静かになる。 「代わりました、孝一です」 電話から聴こえるのは聞き慣れた父の声だ。 《さっき、志井名が来ただろう。思った通り、探りにきたな?》 「はい。」 《この調子でいけば大丈夫だ。今週末の、森とのパーティー、ミスはするなよ》 「はい。」 それだけ確認すると、彼は満足したような声を残し、電話を切った。