昼休み終了を告げる鐘の音が、聞こえる。
そよそよと吹く風に身を任せて目を瞑っていたら、いつの間にか少し眠ってしまったようだ。
空は多分きれいだろうけど、見上げるのはよそう。
そんな気分じゃないから。
軽く欠伸をしつつ、貯水槽から梯子を伝って下に降りて、のんびりと出口へ向かう。
踊り場を通る際に、ふわりと漂う香りに、思わず足を止めた。
もしかして。
急いで階段を駆け下りると、その後ろ姿がないかと捜した。
視線を彷徨わせながら、はたと気づく。
見つけて、追いついたとして、自分は何をしようというのだろう。
「ホント、最悪」
苦笑交じりに呟き、項垂れた。
彼女を振り向かせても、自分には何も出来ないのに。


