風が、吹いた




視界の中から、忌々しい黒光りする車が姿を消すと同時にー



ガッ




力任せに傍にあった壁を蹴った。




それと一緒に砂が散る。




「心変わり…だ?」




ーそんなもの、許すような人間じゃ、ないだろう。



したところで、何にもならない。



ほんの少しの時間稼ぎになる位だ。



それも、コンマ何秒も変わらない程度。




「ふざけんなよな…」




怒りなのか、絶望なのか、わからない感情を纏い、暫くじっと、地面を睨んでいた。