「悪い、ちょっと出るわ。」
本を持って立ち上がると、橋本に断って教室を出る。
「おう、椎名。あれだぞ、お前人目につくと色々面倒だからよ、気をつけろよー色男!」
後ろから、橋本の忠告が聞こえた。
いつもの特等席。誰も来ることのない、屋上へと向かう。
「椎名くん!」
3階に続く階段を上る途中で、呼び止められた。
面倒だ、と思いながらも、くる、と顔だけ振り返ると、恐らく同じ学年だと思われる女子が顔を真っ赤にさせて立っていた。
「あの…」
「それ以上寄るな、阿呆が伝染る」
言い捨てて、階段を再度上り始める。
あぁ、めんどくさ。
機嫌の悪さに今ので拍車がかかった。
1年の教室の前を通ると、さらにそれが募る。
きゃいきゃいと騒ぐお前らには、他にもっとやることがあるだろうが。
残念ながら、俺にはできない何かをな。
そんなことにも気づかない馬鹿共ばっかりのこの学校はやはり選ぶべきではなかったか。
それでも親の言うレベルは保ちつつ、学費は自分で持ちつつ、生活しつつ、そしてできるだけ実家から遠く。
その条件に見合う場所はここしかなかった。
県内1位といっても、所詮人間はこんなもんか。
まぁ、前居た所だって相当馬鹿ばっかだったけどな。


