風が、吹いた


ー面倒くさい。



変な熱気で暖かくなっていた教室から、廊下へ出ると、たちまち寒気が身体を襲う。



それでも、このくらいの冷たさの方が、自分には合ってると思う。



いつものように、誰も居ないであろう屋上へ続く踊り場へ向かった。



そういえば、屋上に行けば、誰にも邪魔されずに人間観察できるだろうか。



ふいに思いついて、いつもの場所は通り過ぎて、屋上への階段を上る。



鍵は当たり前のように開いていた。風もこないだよりは弱いせいか、降り注ぐ陽射しが暖かい。



端にあるフェンスの所まで歩いていくと、それ越しに校庭が見える。



期待したはずの光景はそこにはなかった。



さっきまであった人気も歓声もすっかり消えて、校庭は静けさを取り戻していた。



「終わっちゃったかー……」




なんとなく損した気がして、ふーと溜め息を吐き、その場に座り込んだ。