風が、吹いた


受付を済ませると、大勢の人間が会場に集まっていた。




「ふーん。まぁまぁの人たちが集まってますね。あ。」




加賀美の視線の先を見ると、一人の女性がつまらなさそうに壁に背を預けていた。




「あれ。森先輩の妹ですよ。亜耶乃。」




姉のような華々しさや威圧感はなく、どちらかといえば目立たない容姿の彼女は、髪型も明日香と対照的に短かかった。



加賀美は別に話しかけに行くわけでもなく、周囲をきょろきょろと見渡している。




「森先輩はどこにいるんだろう」




言われてみれば、見当たらない。



そのうちに、主催者の挨拶が始まった。つまり、森の父親だ。



贅をつくしたオードブルを横に、全員がそちらの方へ顔を向けている。




「だらだら長い挨拶してないでさっさと終わらせてくれませんかね。」




隣の悪舌どうにかして欲しい。




『それでは、私の愛娘を紹介致します。明日香です』



紹介の言葉と共に、煌びやかな衣装に包まれた森明日香が姿を現した。




「どうりで、見当たらなかった筈ですね。」




こそっと、加賀美が耳打ちする。