風が、吹いた


加賀美自身も目立つような服装はしていないが、胸元が大きく開いた黒のドレスは、高そうなシルバーのビーズで刺繍が施してあり、洗練され、かつ、気品漂うものだった。



髪もいつもとは違って、垂らしてある。




「良かった。早めに待ち合わせしておいて」




つい見惚れていると、にやりと加賀美が笑った。




「え…?」




急に加速した車に顔を引き攣らせつつ、加賀美の思惑がわからなくて、ただただシートにしがみついた。