「ありがとうございます」
東海林にお礼を言って、その封筒を自分の鞄の中に閉まった。
実験室に行って、研究室の全員に挨拶を済ませると、少し時間に余裕が出来たので、休憩がてら屋上へ向かう。
実験の進み具合は、至って順調だった。
ほっと安心の息を吐いて、着替える際、白衣のポケットに忍ばせておいた封筒を取り出す。
ピリピリと開けると、百合の香りと、少しの煙草の味が、ふわっと漂った。
中身は、彼女の言葉通り、父親が経営するホテルの20周年を祝うというパーティーの招待状だった。
「今、大丈夫かな…」
携帯を持ちながら、悩んだ末、電話を掛けた。
3コールくらいすると、
《はい、第1研究所加賀美です》
加賀美が出てくれた。
「倉本だけど。今大丈夫?」
《え、あっ、倉本さん!大丈夫ですか?》
少し声が裏返っているのがわかる。余程心配を掛けてしまったのだろう。
「うん。色々ごめんね。ありがとう。」
感謝を伝えると、加賀美は何故か怒り気味に。
《滅相もない!倉本さんはもう少し、休まないと駄目ですよ!》
と言った。
「ありがとう。でも、これ以上休んでると、身体がおかしくなっちゃうよ。」
私は、笑って答える。


