風が、吹いた

立ち上がって、困ったように後ろ手で頭を掻きながら、尋ねた。




「あ、はい。まぁ…」




大嵐の中、海の波に呑まれました、なんて口が裂けても言えない。



言葉を濁しながら、どう返せばいいか思案していると、ドアが開く音と共に、東海林が顔を出した。




「あ、倉本じゃん。大丈夫なの?お前。昼から出てきたりしないで、今日1日休めば良かったのに。」




言いながら、沢山のファイルを抱え中に入ると、空いているデスクにぶちまけた。




「東海林さん、本当にご迷惑お掛けしました。」




「あんま無理すんなよ。ところで、オフィスの方にお前宛で速達がきてたぞ。今日こっち来るって言ってたから、持ってきた。」




ごそごそ、とポケットから出して、ぽい、と私の前にある机に投げた。




真っ白い封筒に、私の名前が印刷されている。



裏返すと、森 明日香の名前が書かれていた。



まただ。



また、原因不明の焦燥感が、私を襲う。