風が、吹いた

「フリュイに行くなら、ここから少しあるね。」




佐伯さんが、呟いた。




「え、そのお店、佐伯さん知ってるんですか?」




「一応、ライバル店だからね」




お釣りと一緒に、挽いた豆を袋に入れたものを渡してくれたので、お礼を言った。




ドアを開けると、カランカランとベルが鳴る。



「彼氏?」




躊躇いがちに、訊かれた言葉に。




「そのうち、佐伯さんの所にも連れてきますね」




肯定する形で、答えた。