風が、吹いた




「日曜日でも、バイト雇うことにしたんですね。知らなかった。」


樋口が頼りない足取りで、トレイを運んでいるのを横目に、佐伯さんに言う。




「日曜も入れないと、お金が困るんだってさ。」




困った様に笑う佐伯さんを見て、私も少し微笑む。




「佐伯さんの所には、困った子ばかり集まるんですね。」




その言葉に、大きく頷く様子が、なんだか可笑しかった。



「笑いすぎだよ、千晶」




指摘されても、私の笑いは止まらなかった。







大丈夫。





私は笑顔を失ってない。





あの時くれたものは、ちゃんと持ってる。





置いて行ったりしないから。




私はこれからも、笑うから。





笑顔でいるって、決めたんだ。