________________________ 誰も居なくなったテーブルに、手付かずのコーヒーが冷め切って置かれている。 すぐ傍に週刊誌が開いたままであるのを、片付けに来た店員が手に取った。 「さっきのお客さんが置いていったのかしら」 なんとなく、見つめてしまった写真には、男性と女性が寄り添って歩く姿が映し出されている。 「あ、これ」 最近自分も見た記事だと、思った。 「嘉納孝一だ」 呟くと、丸めたそれを脇にはさんで、仕事に取り掛かった。